令和4年度 大田支部第2回研修会

9月13日(火)午後6時30分より、大田区産業プラザPiOのD会議室において、令和4年度第2回大田支部研修会が開催されました。

「家族信託入門 令和版」と題し、朝日新聞「頼りになる相続のプロ50選」にも掲載された、家族信託の第一人者でいらっしゃる千代田支部の石川裕一先生が講師を担当されました。

夏に後戻りしたかのような蒸し暑さにも関わらず、他支部の先生方を含め、合計36名(大田支部26名・他支部10名)の参加がありました。

超高齢化社会の現在、認知症などで判断能力が衰えたときのための備えについては社会的関心も高く、そのなかでも比較的新しい制度である家族信託は、先生方にも興味深いテーマであったと思います。

2時間という限られた時間の中で、一般法である民法と特別法である信託法との優劣関係、成年後見制度との違いなど、家族信託の仕組みから、家族信託を取り巻く背景と現状、家族信託のメリットとデメリット、認知症による財産凍結、実務上注意するべきことまで、盛りだくさんの論点を丁寧にお話しいただきました。

まずは、信託契約の基本である、民法上の所有権を「名義(管理処分権)」と「受益権(使用収益権)」を分離する考え方について、イラストを用いて視覚的にわかりやすく解説していただきました。続いて、委託者と受益者が同じ「自益信託」、委託者と受益者が違う「他益信託」、財産継承の道筋をたてることのできる「受益者連続型信託」についても、イラストや印象に残る余談を交えて、とても分かりやすくご説明いただきました。

その他にも、さまざまなケーススタディをご紹介いただき、家族信託制度を使うことで複雑な事例への対応も可能になるということが分かりました。

家族信託は、信頼できる家族との間で、将来の財産管理と資産承継を、柔軟性をもって行うことができる制度だということでした。また、今後は、生前相談や相続手続の相談等の行政書士業務の中で、信託された財産を扱う可能性が増えてくるということでした。

講義のまとめでは、故 四宮和夫先生のお言葉(「信託の事例は無数にありうるわけで、それを制限するものがあるとすれば、それは法律家や実務家の想像力の欠如にほかならない」)

と、行政書士法第1条(「国民の利便に資し、もつて国民の権利利益の実現に資すること」)を引用いただき、私たちの間断ない知識研鑽の必要性を改めて実感しました。          

講義の冒頭で、「信託は一度で理解するのは難しい制度なので、まずは広い射程でとらえるように」というお話がありました。終始丁寧でわかりやすく説明頂いたので、講義終了時には、参加された先生方は、複雑な信託制度の入口をイメージすることができるようになっていたのではないでしょうか。具体例をふんだんに取り入れた充実のレジュメは、参考書としても活用できる貴重な情報にあふれていました。

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